このページはモダンな現代アート(絵画・版画・レリーフ・書・オブジェ・彫刻など)をリビング、玄関、書斎、またオフィスの会議室、応接室、マンションエントランス、病院、ホテルなどに納入した事例や、現代アートとは、抽象画とは、 アートの飾り方など、アート購入に役立つ情報をブログ形式でご紹介しています。

アート購入に役立つ!アートに必要な10の視点アート購入に役立つ!アートに必要な10の視点

現代アートを買う人々

現代アート(現代美術)に対して、「現代美術って解かり難い」とか「現代アートの何処がよいのか解からない」という感想をお持ちの方もきっと多いことと思います。

むしろアートといえば風景や静物・花などを描いた絵のことだと思っておられる方が大半なのではないでしょうか。
しかし、現代アートは少しも難解なものではなくむしろ人々の心を楽しませたり寛がせてくれるとても明解なアートなのだということをお話したいと思います。

前川強

前川強

弊社が現代美術の作品を中心に取扱うようになってから10年余り経ちました(2006年3月現在)。なおそれまでの20年余りは具象系の洋画や日本画が中心でした。
この30数年間のあいだにたくさんの思い出ぶかいクライアントにお会いしましたが、以下に比較的最近知り合ったクライアントの中で、特に印象に残っている3人の方々をご紹介したいと思います。

最初にお話するのは、I さん夫妻のことです。I さんは建築関係の、ある消費財を製造・販売されている40代前半の実業家です。車に趣味をお持ちで、ポルシェ、国産の乗用車、ジープなど何台もの車をT.P.Oに応じて使い分け楽しんでいる方です。
I さんとは旧知のインテリアコーディネーターの紹介で知り合いました。そのコーディネーターの話では、(I さんは)百貨店の美術外商の方が有名な画家の作品をたくさん持ってきてくれたが、今ひとつ家の雰囲気に合わないので、違った傾向の作品を探しておられます、ということでした。
そこで私共は早速 I さんと連絡をとり、約束の日にはたくさんの現代アートを車に積んでご自宅に伺いました。私共がお持ちした現代アートは、色と形だけで画面をつくっているいわゆる抽象でしたので、初めて絵を買う方に果たして理解してもらえるかどうか、少し不安をかかえての営業でしたが、 その不安はまったくの杞憂だということが直ぐにわかりました。御夫妻はどの作品にもとても興味を示され、「この作品がいいね!」とか「この作品も素敵ね!」などとお二人で楽しそうに相談しながら、玄関吹抜け用の大きい作品を始め、リビング、和室、寝室、子供部屋などに次々と作品をご注文下さいました。 その後もお気に入りの作品を何点もお買いになり、また会社の新社屋にも多数の絵を購入されましたので、ちょっとした現代アートコレクションができあがり、I さん夫妻にアートという趣味がまた一つ加わることになりました。
何度目かに会った時に I さんが言ってくださった次の言葉をいまでも忘れることはできません。それは、「私はこのようなアートが世の中にあるということさえ知らなかったし、直接目にするのは初めてでしたが、これらの作品は私たちの気持にぴったりなので、私はずっと昔からこういう絵を心の奥で求めていたのだな、という気がしています」というものでした。

次 にお話するのはKさんという女性のことです。元々Kさんは、マンションに絵を飾りたいと言われる知人のために、インターネットでアート関連のサイトをいろいろご覧になった末、私共の画廊をお訪ねになった方でした。
最近は私共のような現代アートギャラリーにもホームページをご覧になってコンタクトしてくださる方が少しずつ増えてきているのです。
Kさんの絵を見る目はとても正確でとりわけ色に対する感覚がすばらしく見るからにセンスの良さがうかがえる魅力的な女性です。この時はその知人の方がKさんのアドバイスにより現代アートを3点購入してくださいました。
その後Kさんから、「(知人が買われたのと)同じ作家のオレンジ系統の作品が手に入ったら知らせてください」という宿題をもらいましたので、心がけていたところ、約3ヶ月後に鮮やかなオレンジ色の数点の作品を作家のアトリエで見つけることができ、早速その週末に作品をご覧いただきました。
Kさんはご自分のマンションの寝室に飾るつもりですと言ってその中の1点を購入されましたが、帰り際に、「私は最近“気”が低下してきているのでオレンジ色で気の力を上げようと思って買うことにしたのですよ」と言われた言葉がとても感動的でした。 それはまるで、昨夜はよく眠れなかったので、今日は早く寝ようとか、お腹が空いたから、おやつにしようとか、あるいは仕事関係の本ばかり読んで頭が疲れたから次の休みには好きな小説でも読もうかな、などといった私達が日常よく交わす会話と同じような、ごく自然で何気ない口ぶりだったからです。
私共は日頃アートについて説明する際に、アートの効用として、“癒し”の側面をお話しすることがありますが、そのことをKさんがごく当たり前のこととしてお話になったことがとても印象に残っています。

最後はWさんという男性のことをお話させていただきます。Wさんはある医療関係のコンサル会社に勤務するとてもまじめで有能な社員です。Wさんと知り合ったのは、Wさんが手がけていた有料老人ホームのアートワークがきっかけでした。Wさんとその同僚のNさんもまだ20代の若さです。
この会社は、社員の皆さんがとても礼儀正しく、仕事を任されているためか皆さんが非常に溌剌としていて、この会社はきっともっと伸びるだろうな、と部外者にも感じさせる何かを持っている会社です。
Wさんは、絵のことはあまり詳しくないと自分では言っておられますが、実際はとてもセンスの良い方で、老人ホームに飾るアートに対しても、単なるインテリアとしてではなく、人々を楽しませたり、寛がせたりするためのツール、または装置として考えておられるようで、そのようなツールまたは装置として現代アートはとてもふさわしいことを良く理解しています。

坪田昌之

坪田昌之

以上ご紹介した三人に共通していることは三人ともアートのコレクターだった訳ではなくむしろ初心者といってもいい程の人たちだと言うことです。 ただ、もう一つ三人に共通していることは、絵をご覧になる時に、<絵の中に意味を求めない>といいますか、<バラの花、リンゴ、あるいは風景などのような意味のあるものが描かれていなければ絵ではない>という固定観念から解放された立場で絵をご覧になっているということです。
ピカソが、あなたの絵にはどんな意味があるのですかと聞かれたときに、ではあなたは鳥のさえずりを聞くときに、その意味を求めますか? と問い返したという有名な話があります。
現代美術は色彩と形で構成されたとても楽しいアートです。私共は、皆様方がアートに対して難解な意味を求めず、単純に色と形の美しさだけを楽しんでいただくことを、アートの現場から強く願っております。

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