このページはモダンな現代アート(絵画・版画・レリーフ・書・オブジェ・彫刻など)をリビング、玄関、書斎、またオフィスの会議室、応接室、マンションエントランス、病院、ホテルなどに納入した事例や、現代アートとは、抽象画とは、 アートの飾り方など、アート購入に役立つ情報をブログ形式でご紹介しています。

アート購入に役立つ!アートに必要な10の視点アート購入に役立つ!アートに必要な10の視点

美術品の鑑定

有名洋画家、日本画家の作品を中心に1500点もの作品を所蔵しているあるコレクターから価格の鑑定依頼を受けましてこの度全コレクションの価格鑑定を行ってまいりました。 このコレクションの鑑定は約10年前にも行ったことがありましたので、当時の価格と比較しながらの作業となりましたが、当初予想していた通り大幅な価格変動が見られました(ほとんどが大幅下落、一部が小幅な下落もしくは現状維持、ごく一部が上昇)。

以下に秘密保持の観点から多少脚色を加えておりますが、洋画、日本画等いわゆる近代絵画についてこの10年間の価格の推移の概要を論じたいと思います。
有名作家の場合は、2~3割程度、1/3程度、もしくは1/5程度に下落、と下落幅に大きな差が見られました。
またそれほど有名ではない作家の作品の場合はそれ以上に下落しているという鑑定結果となりました。
日本画では横山大観、東山魁夷、平山郁夫等は2~3割程度の下落に留まるか、作品によっては上昇も見られましたが、その他の著名作家は総じてもっと下がっています。 千住博は日本画家ではありますがグローバル化の影響で現代アートとして取り扱われており大幅に上昇していました。
洋画の場合、元永定正は概ね上昇。小磯良平は少し下がった程度でした。 藤田嗣治は著しい価格の上昇が見られました(6~10倍)。 これはフジタが海外のオークション市場での人気作家の一人だからでここでもグローバル化の影響が大きく見られました。また山口長男も海外のマーケットで比較的高額で取り引きされている数少ない作家の一人で価格の上昇が見られました。山口長男は洋画家ではありますが日本画の千住博と同様現代アート作家に位置づけられています。
総じて、日本画、洋画の下落、そして現代アートの上昇(10年前と比べると5~10倍に上昇)が一般的な傾向と言えます。

以下にこの価格変動を読み解くキーワードを5つ挙げたいと思います。

グローバル化

弊社が創業した1972年頃の美術品市場は日本国内だけで成り立っていました。 当時は「交換会」という美術商のみで構成された閉鎖的な市場だけが存在していて、そこで梅原龍三郎、中川一政、岡鹿之助(洋画)、横山大観、杉山寧、東山魁夷(日本画)などの著名画家の作品がこの交換会という密室の中で売買されており価格は買い手であるコレクターに知らされることはありませんでした。
そして、一流の作家でさえ日本国内でのみ価値(価格)があり海外のオークション市場で評価、取り引きされることはありませんでしたが、当時はアートの売買が国内市場だけで自足しており、それでも支障はないという風潮が一般的でした。 また、海外のマーケットでの主要銘柄であるピカソ、ゴッホ等も流通経路が整っていなかったためコレクターが海外相場で入手することは困難な時代でした。
一方、昨今はグローバル化の影響で海外のオークション会社が日本にも進出し、また国内のアートオークション会社も誕生しはじめ、一般のコレクターが直接オークションに参加するようになった結果、国内外の作家の価格が一般のコレクターに公開されることになり業者のみの交換会が成立しにくくなっていった経緯があります。 また、グローバル化により中国人、台湾人等主にアジアの富裕層が日本の美術品の主要な購入者となるにつれ、海外のコレクターの好みが日本人作家の作品の市場価格にも強く反映されるようになってきています。
というわけでグローバル化により日本人だけで構成してきた日本作家の価格体系が崩れてきていると言えます。

現代性

下記に述べる好みの変化とも関係しますが、時代はより“現代性”のある作家と作品を求めています。
その結果、伝統的な近代絵画と呼ばれる日本画や洋画があまり好まれなくなり、現代アートというジャンルの作家、作品が主流になってきています。
因みに現代アートが日本の市場に現われはじめたのは1970年代ですが、世界が一つになり始めた結果、特にアメリカで優勢な現代アートが日本でも優勢になってきて多くのコレクターがそれを購入している反面、近代絵画に対する需要が少なくなってきています。

建築様式

好みの変化、現代性とも関係しますが、美術品が装飾品である以上、美術品を飾る建築の様式により求められる美術品も変わってきています。 近代絵画の持つ重厚さ、豪華さがむしろ敬遠され、人々の好みはおしゃれで現代的な現代アートに移行してきています。
また、建築様式の変化と共に生活スタイルも大きく変化しているため、掛け軸、屏風、お茶道具等にも大幅な価格の下落が見られました。

好みの変化

美術品は元々そうだったのですが、その時代を生きるコレクターの好みにより“好まれる作家、好まれない作家”が大きく変わってきます。
この20年、30年の間に美術商の世代交代も激しく、美術商毎に好みの作家、取り扱う作家も変わってきております。 好まれる作家とあまり好まれない作家がどのような理由で分かれるのか、という問題はなかなかに難しくアートの現場にいる人間にも分かり難い問題です。
“時代の空気”が変わったと表現するほかないような面があります。

真の実力

長年にわたり日本の日本画、洋画の市場を牽引してきた作家たちの中でも価格の変動には大きな差が見られました。 しかしその中でも下落幅の大きい作家、さほどでもない作家、また逆に上昇している作家が混在しています。 長年にわたり共に画壇のトップ集団を形成していた著名な作家たちにこのような差が生じていることは誠に不可解ですが、スポーツのマラソンレースと同様、突き詰めれば長い歴史の中で真の実力の差が現れてきたため、と言うほかないのかも知れません。
当時優劣をつけがたかった作家たちの中で相変わらずトップを走っている作家、第二集団に落ちてしまった作家、レースから大きく後退してしまった作家たちの有り様を見ますと誠に不可解でもあり驚きを禁じえません。

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